
糖尿病内科
糖尿病内科
糖尿病とは高い血糖値(高血糖)が続くことで、様々な臓器に合併症を起こす病気です。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。
ブドウ糖(グルコース)は体を動かしたり、体温を維持したり、脳を働かせたりするなど体中の細胞が必要とするエネルギー源です。健康な人の場合、常に血糖値は適度な範囲(70-140mg/dL)にコントロールされています。食事をして血糖値が上がるとその変化を膵臓が感知し、インスリンというホルモンを分泌することにより血糖値を下げています。インスリンは体中の細胞(特に肝臓、筋肉、脂肪など)でブドウ糖を血液中から細胞に取り込ませエネルギーとして使わせる役目があります。さらに、余分なエネルギーは脂肪やグリコーゲンといった物質に変えて保存されます。
糖尿病は原因によって、いくつかの種類に分かれます。
1型糖尿病
免疫の異常
糖尿病の約10%がこの型です。多くは若年で発症します。自分の体の免疫が誤ってインスリンを作る細胞を壊してしまう病気です。多くが急激に発症します。インスリンがほとんどでなくなるので、インスリン注射が必要になります。
成人でいきなり発症する劇症1型糖尿病や急性発症1型糖尿病、ゆっくりと進行する緩徐進行1型糖尿病などがあります。
2型糖尿病
体質と生活習慣によるもの
糖尿病の約90%を占めています。中高年に多く、肥満や生活習慣のためにインスリンの働きが悪くなります。進行すると膵臓からのインスリン分泌が少なくなる、もしくはなくなります。遺伝的素因(人種や家系によって生まれつき決まっている、糖尿病のなりやすさ)があり、生活習慣によって引き起こされるものです。つまり、遺伝的に糖尿病になりやすい人が、生活習慣の乱れによって発症する糖尿病です。
その他の原因によるもの
膵臓や肝臓の病気、遺伝子の異常、薬物が原因となり、引き起こされることもあります。妊娠により糖代謝異常(妊娠糖尿病)をきたすこともあります。
実は血糖が高いこと自体の症状は、ほとんどありません。
そのため、初期の糖尿病は自覚症状で発見されにくく、また軽く思われたり、見過ごされやすいのです。つまり知らないうちに進行してしまいます。
しかし、著明な高血糖が長期間(数ヶ月から半年以上)続くと、症状が出現してきます。
つまり、下記のような症状を自覚したときには、すでにかなり重症な糖尿病になっているという可能性があります。
糖尿病の症状は人によってさまざまです。初期は自覚症状が乏しく、早期発見が難しい病気です。気になる症状がある方や、健康診断などで高血糖や糖尿を指摘された方は早めの受診をお勧めします。
糖尿病であっても、血糖値が少し高いだけでは、症状がほとんどないのが普通です。しかし、その間にも、少しずつ体の血管や神経は蝕まれていきます。その結果、体のあらゆる部分に張り巡らされている血管の動脈硬化や神経障害が進み、発症から数年~数十年して様々な障害が起きてきます。これが糖尿病の合併症です。
合併症は気づかないうちに進み、一度進行してしまうとなかなか元の状態に戻せません。
糖尿病の本当の恐ろしさは、この合併症にあると言ってよいでしょう。
糖尿病神経障害
神経は血管とともに全身に張り巡らされ体中に様々な情報を伝えているネットワーク回路のような役割を担っています。血糖値の高い状態が長く続くと、少しずつ神経自体がダメージを受けたり、神経周囲の細い血管が傷み、最終的には働かなくなってしまいます。神経には手足の感覚や運動をつかさどる末梢神経(感覚神経、運動神経)や胃腸・心臓など内臓の働きを調節している自律神経などがあります。
糖尿病では初期から末梢神経が障害され、両足の裏に何かくっついているような違和感や常にしびれているような感覚、痛みや感覚過敏を生じることがあります。進行すると神経が脱落することによって痛みや温度などの感覚がなくなってしまいます。すると足が壊疽(腐ってしまうこと)となり、敗血症で死亡するリスクが高くなるため足を切断することになります。
自律神経は、自分の意思と関係なく心臓や胃腸など内臓の動きを調節したり、血管の太さを変えることによって血圧の調整をしたりしています。自律神経が障害されると便秘になったり、急に立ったりした場合に立ちくらみが生じたりします。特に心臓については心筋梗塞が起こっても胸の痛みを感じずに重症化してしまったり、低血糖の自覚症状が出なくなり(無自覚性低血糖)意識を失うこともあります。
神経は血管と同じく全身にあるため、様々な症状が生じます。
糖尿病網膜症
糖尿病における眼の病気はさまざまです。白内障、緑内障や黄斑変性なども糖尿病においてリスクは増大します。その中でも網膜症は特に失明原因となる病気です。「網膜」は眼が光を受け取るカメラにおいてはセンサーの役割をしている重要な部分です。もちろん眼の中では網膜が最もエネルギーを必要とします。そのため網膜の血管が障害されると、ぼろぼろの血管やこぶができたり、しみのように血液成分が染み出したりします。やがて血管がやぶれて出血したり、網膜剥離を起こしたり、網膜細胞が死んでしまい失明につながります。
網膜症で失明しないためには、症状がなくても定期的に眼科に通院して網膜を見てもらい(眼底検査)、症状が出ないように適切な治療をしてもらうことが大切です。根本的には発症・進展しないよう、血糖値を正常に近づけることが重要です。
糖尿病では特に眼の異常を指摘されていない場合でも、1年に1度は眼科受診をして糖尿病連携手帳などに眼の状態を記入してもらいましょう。
糖尿病腎症
腎臓は、血液より尿をつくり体内の余分な水分や毒物・老廃物を体外に排泄する役割をしています。つまり腎臓は、糸球体というとても細い血管のかたまりが集まってできているため血糖が高いことによって障害を受けやすいのです。
血糖値が高い状態が長く続くと、糸球体がダメージを受け、少しずつ数が減り、腎臓の働きが落ちていきます。まず「尿として体外に出してはいけないもの」つまりたんぱく質が尿に出てきてしまうようになります。これが尿蛋白です。タンパク質のうちアルブミンが目安として測定されます。さらに糸球体のダメージが進むと、体内の水分の調節ができなくなりむくみの症状が出てきたり、呼吸不全・心不全症状が出現します。最後には血液中に老廃物及び毒物がたまり尿毒症となってしまいます。尿毒症となると命に関わる状態となるため機械などにより血液をきれいにする透析が必要となります。
透析(血液透析)となると週に3日、1回につき約4時間ベッドのうえに貼り付けの状態となってしまいます。普段の生活にかなりの時間的制限が課せられることになるのです。
糖尿病から腎臓を守るには、良好な血糖コントロールを保つのが第一です。また、血圧をしっかり管理することも重要です。糖尿病患者さんの自宅血圧は、収縮期(上の)血圧が125、拡張期(下の)血圧が75を下回るようにコントロールするのが目標です。
脳梗塞、心筋梗塞、脳卒中、皮膚病、感染症、閉塞性動脈硬化症、歯周病なども合併症として挙げられます。
高血糖の状態が続くことは、体中の血管の動脈硬化を進行させます。動脈硬化が原因で起こる病気は、(足の)壊疽、脳梗塞、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)など命や生活の質を脅かすとても怖いものばかりです。メタボリックシンドロームや喫煙をしている人では、更に危険性が増すので、これらの危険因子を一つずつ克服していくことが重要となります。
1型糖尿病ではインスリンの必要量が不足しているため、インスリン注射によって補う治療が中心となります。2型糖尿病では合併症の発症・進行を予防するための血糖コントロールが基本となり、食事療法、運動療法、薬物療法の三つが柱となります。
糖尿病において食事療法は治療の根幹となります。炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素をバランスよく摂ることや、ビタミン、ミネラルなどを欠かさず摂取することが大切です。具体的には「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病学会)という表を利用し栄養バランスの良い食事を摂ります。2型糖尿病の場合、厳格に食事療法を行えばそれだけで血糖コントロールをできる可能性があります。医療機関では医師や管理栄養士から指導を受けたり、講習会に参加したりして、栄養バランスのとれた食事の仕方を覚えるようにしましょう。
運動で体内に余分に溜まったエネルギーを消費することで血糖値が下がります。また、インスリン感受性が高まり、血糖コントロールがしやすくなります。運動療法としてはウォーキングや自転車、スイミング、ジョギングなどの有酸素運動を1回20〜40分、週に3回実施します。
週末に集中して運動するといった方法よりも、できれば毎日できる運動を選びましょう。
2〜3ヶ月ほど食事療法と運動療法を続けても、血糖のコントロールが上手くできない場合には薬物療法を検討します。経口血糖降下薬を用いる内服療法と、インスリンなどを注射で補充する自己注射法の二つがあります。近年、糖尿病治療薬は大きく進歩しており、DTP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などが登場しています。これらの薬は治療過程で生じることがある低血糖を起こしにくく、体重を減らす作用を持つものもあります。どの薬物をいつから開始するかは、患者さんの糖尿病のタイプや合併症の進行程度などによって、総合的に判断して決められます。
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