
内分泌・代謝
内分泌・代謝
内分泌内科では、ホルモンを作る臓器の病気やホルモンの異常をきたす病気を専門的に診療します。内分泌疾患は、疑わないと発見が困難であることと、すぐにわかる特徴的な症状が現れにくいことが多く、内分泌疾患の十分な知識がないと診断することが難しいといえます。
当院では、内分泌臓器(下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎など)の診療に加え、電解質バランスの異常や内分泌の病気を原因とする高血圧、脂質異常症、糖尿病などにも幅広く対応しています。
内分泌疾患には、比較的頻度の高い病気がたくさんあります。いずれも早期発見が非常に重要な疾患ばかりです。症状が当てはまる方や、気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
血液中の甲状腺ホルモンが多くなることを甲状腺中毒症といいます。その原因としては甲状腺がホルモン分泌過剰による甲状腺機能亢進症と、一時的に甲状腺が破壊されることにより蓄えられていたホルモンが血液中に出てしまう破壊性甲状腺炎に分類されます。
バセドウ病などの甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、代謝が高まる(亢進する)ことで症状が現れます。
甲状腺中毒症の典型的な症状としては、暑がりになり汗をかきやすくなったり、手がふるえたり、体重減少、動悸などが現れます。下痢や気持ちが落ち着かない、怒りっぽくなる、疲れやすいなどの症状が出ることもあります。また、眼球が突出して、周りの人に指摘されたり、目が完全に閉じなくなったりすることもあります。多くの場合、機能亢進症に対して、まず抗甲状腺薬による薬物療法が行われます。
橋本病は慢性甲状腺炎とも呼ばれる甲状腺機能低下症の代表的な病気です。免疫の異常により炎症が生じ、甲状腺が少しずつ破壊されます。甲状腺の炎症により首が太くなったように感じます。甲状腺が破壊されることにより甲状腺ホルモンの分泌量が減ります。全身の代謝が低下するため、耐寒性の低下(寒がり)、体重増加、体温低下、だるさ、便秘、高脂血症などが出現します。また、気分が落ち込んだり、不安感が増したりすることもあります。うつ病や更年期障害、脂質異常症として治療されていることもあるので、疑わしい症状があれば、甲状腺ホルモンの検査をお勧めします。
甲状腺腫瘍および甲状腺腫瘤は無症状のことが多いため、頸部のしこりに偶然気づいたり、健診などで指摘されたりします。多くは良性腫瘍であり、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)、のう胞などが含まれます。悪性腫瘍(甲状腺がん)は、乳頭がんが全体の90%以上を占めているといわれています。甲状腺に腫瘍が見つかった場合、良性、悪性を判断するために速やかな受診をお勧めします。
脳下垂体は大脳の下に垂れ下がっている器官であり、内分泌腺のホルモン分泌や尿量を調節するホルモンの中枢的な役割を果たしています。脳下垂体のホルモン分泌が増加する病気には巨人症、先端巨大症(末端肥大症)、クッシング病、プロラクチノーマなどがあります。逆にホルモン分泌が低下する病気には下垂体機能低下症や中枢性尿崩症があります。下垂体腫瘍の中には症状としては視力・視野障害をきたすものがあります。総じて良性が多く、時間をかけてゆっくり増大する特徴があります。
副甲状腺の病気の多くは、副甲状腺機能亢進症です。副甲状腺ホルモンの過剰な分泌によって、血液中のカルシウム濃度が上昇し、尿路結石、骨粗鬆症や高カルシウム血症によるさまざまな症状(食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、倦怠感、筋力低下、精神症状、のどの渇き、多飲多尿など)を引き起こします。血液中のカルシウム・副甲状腺ホルモン(PTH)量が高値になることで診断ができます。
副腎は腎臓の上にある小さな器官であり、ホルモンを作る働きをしています。副腎に腫瘍ができ、ホルモンが過剰に産生されると、太ってきたり、高血圧になったり、血糖値が高くなるなどさまざまな症状が起きてきます。副腎ホルモンの一つであるコルチゾールはストレスホルモンとよばれるものの、人の生命維持にとって必要不可欠なホルモンであり、副腎の働きが悪くなる副腎皮質機能低下症、副腎不全は生命に関わることもあります。血液検査のほか、ホルモン負荷試験や各種画像診断等で正確に診断することが重要です。
日本高血圧学会では上の血圧である収縮期血圧(心臓が収縮したときの血圧)が140mmHg以上、または下の血圧である拡張期血圧(拡張したときの血圧)が90mmHg以上を高血圧としています。そのまま高血圧の状態にしておくと脳や心臓の血管が動脈硬化を起こし、脳卒中や心臓病、腎臓病などの重大な病気を発症する危険性が高まります。日本人の高血圧の約8〜9割が本態性高血圧(原因を一つに定めることのできない高血圧)といわれていますが、中には別の病気があるために血圧が高くなる二次性高血圧症があります。その多くは腎臓病や内分泌疾患によるものです。特に若年に起こる治療困難な高血圧は、内分泌性高血圧症である可能性が高く、糖尿病を合併することもあります。このような場合、もとにある内分泌の病気を早めに治療することで、高血圧症や糖尿病が治癒することもあります。必要に応じて原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などの検査も行っていきますのでご相談ください。
脂質異常症とは血液中の「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が増えたり、「善玉」のHDLコレステロールが減ったりした状態のことをいいます。この状態を放置していると動脈硬化が起こり、ゆっくり進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患をまねくリスクが高まります。
脂質異常症の発症には、過食、運動不足、肥満、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが関係しているといわれています。「内臓脂肪型肥満」では、LDLコレステロールや中性脂肪が多くなり、HDLコレステロールが少なくなりやすい傾向があります。また、遺伝性の「家族性高コレステロール血症」と呼ばれているものもあります。一般的に内臓脂肪型肥満は外見からはわかりにくいため、必要に応じて腹部CT検査を行うこともあります。
高尿酸血症とは血液中の尿酸濃度が正常より高い状態を指します。尿酸が高くなる原因として、尿酸の産生が過剰となる場合(プリン体の取りすぎ、細胞の代謝異常による増加など)や尿酸の排泄低下(腎機能の低下、利尿薬やアルコールの影響、遺伝的な体質など)があります。
高尿酸血症により関節に尿酸結晶がたまり、激痛を伴う急性の関節炎を起こしたものが痛風です。特に足の親指の付け根の関節に認められる関節の腫れ、赤み、熱感そして激しい痛みがあります。全身的な発熱を伴うこともあります。足首、膝、手首などにも起こることがあります。
高尿酸血症であっても必ずしも痛風となるとは限りません。痛風発作を予防するためにも尿酸値を下げることが進められます。
肥満に伴って糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを合併し、減量が必要とされる病態が肥満症です。単純性肥満と内分泌疾患などに伴う二次性肥満があり、単純性肥満でも内臓脂肪の蓄積による内臓肥満は、メタボリックシンドロームの基盤であり、他の生活習慣病や動脈硬化性疾患の危険性が高まるといわれています。重度の肥満症では生活指導とあわせて、薬物療法や超低カロリー食事療法などが行われることがあります。
骨粗鬆症は、骨の量と質の低下により骨折しやすくなる病気です。生活習慣病のひとつと考えられており、高齢化と共に増加し、予防や早期診断が注目されています。骨粗鬆症には閉経後の女性に多い「閉経後骨粗鬆症」のほかに、甲状腺や副甲状腺など内分泌疾患と関係して起こってくるものもあります。気になることがある方は、一度骨密度を測定することをお勧めします。
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