栄養相談
栄養相談

糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの不足や欠乏から発症する病気で、このインスリンは食事と密接な関係にあります。
食べ物の中に含まれる栄養素の炭水化物は、消化酵素などにより最終的にブドウ糖まで分解されて、小腸から血液中に吸収されます。そして、血液中のブドウ糖が増加してくると、すい臓のベータ細胞からインスリンが分泌され、その働きによってブドウ糖は筋肉などの細胞へ送り込まれ、エネルギーとして消費されます。しかし、インスリンが不足するとこの働きが低下し、体の各細胞がブドウ糖を利用できなくなるため栄養不良となります。一方で、ブドウ糖は利用されずに血液中にどんどんたまっていき、持続的な高血糖の状態となります。この状態を放置すると糖尿病を発症し、様々な合併症が起きてきます。
こうした状態を防ぐためには、食べ物の量を調整し、各種の栄養素も不足しないように、食事の摂り方を変えていく必要があります。つまり、その人にとっての適正なエネルギー量を摂取し、栄養バランスのとれた食事に切り替えていくことが糖尿病の食事療法です。
1日の適正なエネルギー量は、以下の計算式から求められます。
1日の適正なエネルギー量(kcal)=標準体重(kg)(※1)×身体活動量(※2)
1日の食事で摂取する適正なエネルギー量は、体格(身長・体重)と身体活動量で決まります。糖尿病の患者さんごとに状況(性別・年齢・血糖コントロール・合併症の有無など)が異なり、計算式に当てはまらない方もいます。実際には、患者さんと相談しながら決めていきます。
炭水化物・たんぱく質・脂質は、エネルギーのもととなる三大栄養素で、体の中で欠かすことのできない栄養素です。炭水化物はブドウ糖となり、体のエネルギー源となります。たんぱく質は筋肉や臓器などを構成する重要な栄養素です。脂質は体のエネルギーとなり、ホルモンや細胞などを作る材料となります。
骨や歯の材料となるのがカルシウムなどのミネラルです。体の働きを正常に保つためには、鉄・銅・亜鉛などのミネラルやビタミンなども必要です。
このようないろいろな栄養素を適量に摂るのがバランスのとれた食事です。主食(ごはん、パン、めん類など)、良質なたんぱく質を含むおかず(魚類、肉類、大豆製品、卵など)、野菜、海藻、きのこ、こんにゃく、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)、果物などを1日の中で組み合わせて摂取するとバランスのよい食事に近くなります。
食事療法は特別な食事があるわけではありません。1日の摂取エネルギー量を決め、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素の必要量をバランスよくとり、ビタミンやミネラルなども欠かさずに摂るというものです。つまり、食事の偏りを改善し、健康的な食事をすることが目的といえます。生活習慣病を予防するための健康食としての利用も効果的です。
現在、糖尿病治療では合併症の予防に重点が置かれています。合併症は、高血糖を放置することで徐々に進行し、失明や人工透析が必要になる、足を切断する必要があるなど、生活が不自由になるのみでなく、寿命も短くなってしまいます。しかし、適切に食事療法を実行し、血糖コントロールをよい状態に保ち続けることができれば、合併症の進行を抑えて糖尿病でない人と同様の生活を送ることができます。特に、2型糖尿病の場合、多くの人が食事療法だけで病状を改善することが可能です。また、薬物療法(飲み薬やインスリン注射)が必要な場合も、この食事療法がしっかりできていないと、その治療効果は上がりません。その意味でも、食事療法は糖尿病治療の根幹となる治療法といえます。
具体的には医療機関で管理栄養士から指導を受けたり、講習会などに積極的に参加したりして、栄養バランスのとれた食事方法を習得していただきます。「糖尿病食事療法のための食品交換表」を利用するのが一般的です。栄養相談を受ける際は、普段とっている食事内容の写真や食事記録があると、より具体的なアドバイスを受けることができますので、持参するようにしましょう。
近年は、糖尿病の治療者向けのレトルト食品や、カロリーが計算された食材・食事の宅配、また、栄養の計算が容易にできるパソコンやスマートフォンのソフトなどもあります。こうしたものを上手に活用することも有効です。
「栄養相談」というと、エネルギー量の計算や食生活の改善が中心だった時代もありましたが、現在は患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせて、無理のない方法を見出し、実現いただくことが重要とされています。理想的な食事は、なかなかできることではありません。だからこそ、できない時にはどうすれば良いのか、その方法や工夫のポイントをご提案させていただきます。
食事中の炭水化物の量を把握し、血糖をコントロールする方法です。炭水化物(英語はカーボハイドレートで、略してカーボといいます)は、食後の血糖値の上昇に大きく関わります。カーボカウントでは、この炭水化物の量を把握(カウント)して、一食あたりの炭水化物の量を一定にすることで、血糖値を安定しやすくします。その量にあわせてインスリン注射の単位数を調整し、血糖をコントロールすることもできるようになります。
食物繊維以外の炭水化物(糖質)の摂取量を抑え、血糖値や体重を管理しようとするものです。
GIとは、グリセミック・インデックスの略で、ある食品を一定量摂ったあとに血糖値がどの程度高くなるかを示す指標です。同等のエネルギー量の食品でも、低GI食品のほうが食後血糖値の上昇が緩やかになります。このような食品を食事療法に取り入れるケースもあります。
これらは、主治医や栄養管理士の指導のもとに実施されます。
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